金融危機を克服した米国経済

2010年は3%台前半の安定成長へ

家計部門の債務調整はどうなるか。最近は消費者信用の減少のベースがいくぶんか緩むなど変化も生じてはいる。だが、家計の債務残高の対GDP比は依然として高く、年内に調整が終わるとは考えにくい。仮に調整が完了しても、そこから家計が再び債務を拡大させながら個人消費を拡大させていく局面がくることは、少なくとも今後数年間はない。年内の個人消費は後半にかけて少しずつ回復のペースを上げていく展開になるだろう。

 

他の主な需要項目のうち、住宅投資は年前半の政策効果の一巡による息切れの後、年後半は低金利継続なども寄与して安定的な伸びを続けるだろう。輸出もドル安基調と新興国中心の世界経済の回復を追い風に順調な拡大を続けるだろう。オバマ大統領は3月中旬に国家輸出戦略を公表して、今後5年間で輸出を倍増させて200万人の雇用を創出するという目標を掲げた。市場ではこの目標実現に懐疑的な見方も多いが、今年に限れば1年当たりに必要な年間15%の輸出の伸びは達成可能である。以上を総合すると、今後の実質GDPは、個人消費と設備投資の安定した回復を中心に輸出の堅調な伸びが加わって、年率3%台半ばの成長を持続して、10年通年では3%台前半の安定成長を達成という見通しになる。

 

CBO(議会予算局)の算出した潜在GDPと上記の予測からGDPギャップを算出すると、09年半ばの7%をピークに10年第4四半期の4%半ばまで緩やかに低下する見通しだ。同じくCBOによれば同時期の自然失業率は5%、10年末が9%強であっても乖離は大きい。2つのギャップの大きさから見て、デフレ圧力は縮小に向かいつつあるが、解消には程遠い水準で今年を終える公算が大きい。インフレ期待も低位に落ち着くだろう。筆者はGDPギャップの大きさなどから見て、利げ開始は早くて11月、むしろ年内は現状維持の可能性の方が高いと考えている。以上のペースでの景気回復がオバマ政権に及ぼす影響は微妙であろう。失業率の低下は中間選挙に向けてプラス要因だが、年末でも9%台前半では民主党支持に傾く無党派層は限られる。オバマ政権と民主党にとって、上下両院とも今すぐ選挙があるよりはましな結果になるが、苦戦は免れず、負け方、具体的には下院での多数派維持が目標になるのではないか。オバマ政権にとってのもう1つの重要課題は、財政赤字のコントロールであるが、この程度の景気回復では赤字削減への着手は早すぎる。医療保険制度改革が当面は政権が将来の削減の道筋を示して、市場がそれに反応を示すというやりとりが繰り返されるにとどまるだろう。

 

政治的には、この景気の展開であれば、保守派のティーパーティー運動は盛り上がりを保ち、オバマ政権に対する反対姿勢を貫くだろう。オバマ政権は共和党穏健派の一部の支持を取り付けて、当面は金融規制改革法、次に気候変動対策法の成立を目指していくとみられる。中間選挙に向けて当面は共和党穏健派が保守派の追い落としの対象とされ続けるが、それを勝ち抜いた場合に中間選挙で無党派層の支持を得られるかどうかは微妙である。中間選挙の展望は景気予測よりも難しい状態が続きそうである。

 

 

先週発表された米国(アメリカ)雇用統計は事前予想ほど良い内容ではなかったため、米株が売られる一方米債は買われ、為替相場FXでは円高が進むリスク回避姿勢の値動きとなった。欧州の債券市場が荒れていることもリスク回避の米債買い、円買いの一因と見られる。今晩の入札が順調に進むようだと、市場参加者の安定志向と捉えたリスク回避の円買いが入る可能性はある。ただ、明日の10年債、明後日の30年債入札が控えていることもあり、今晩の入札結果で大きく動くことは正直難しい。他に目立った材料もないことからニュースや米株の値動きに注意したい。