金融危機を克服した米国経済

どこまで回復できるか

今年これからの米国経済の行方を予想してみよう。年初から最近までは、緩やかだが着実なペースでの景気回復が続いてきている。家計の最大の懸念材料であった雇用は底を打って回復の安定度が強まってきた。非農業部門就業者数は3月に前月比16.2万人の大幅増加を記録、国勢調査要員など特殊要因を除いても、雇用が民間部門を中心に拡大局面に転じたといえる。それを受けて家計部門の景況感も上向き、生活防衛的な貯蓄増強にブレーキが掛かり、個人消費の伸びが耐久財、サービスなど広範囲で高まってきた。企業部門も、3月のISM指数が製造業、非製造業ともに上昇し、景況感が着実に改善している。足元の在庫投資も再び積み増しに転じた。設備投資は伸び悩み気味だが、今後は雇用とともに伸びていく可能性が高い。商業用不動産は悪化が続いているが、予想外のペースで悪化が進んでしまう最悪期は脱した模様であり、ここを起点にして景気が失速する恐れは非常に小さくなってきた。輸出は受注動向も良く順調に拡大している。

 

今後はどうなるだろうか。企業部門は、上向いてきた景況感を崩す要因は見当たらないことから、生産・売上の緩やかな拡大が継続していくと考えられる。機器ソフトウェアの高い伸びに支えられて、設備投資も堅調な回復を続けそうだ。懸案の商業用不動産は悪化に歯止めが掛かる地域が一部に出てくるだろう。全米平均での調整は年後半まで続き、それを反映して建設投資は年末まで低迷が続くとしても、景気への影響は逓減傾向をたどるだろう。

 

景気回復から取り残される中小企業

 

今後の企業部門の注目点は、金融危機で喪失した自信がどのように回復していくかである。売上が回復しつつあるのに、将来に自信を持てない多くの企業が慎重な経営を続けた09年の構図がどのように変わるか。この金融危機の後遺症の克服には時間と企業収益の回復が必要であろうが、現状から見れば、今年中に積極姿勢に戻る企業の数は限られるだろう。企業部門全体では、年内は財務面の調整が済んでいる設備投資は堅調な伸びが見込めるが、在庫、雇用の回復は緩やかに進む可能性が高い。

 

CFDのリスク要因は中小企業が景気回復の流れから取り残される可能性である。 NFIB (全米独立企業連盟)の事業楽観指数は09年後半から3月まで停滞が続いているし、年明けから4月中旬までに中小金融機関50行が破綻した。 09年に比べれば貸出姿勢を緩和する中小金融機関は増えるであろうが、中小企業にとっての信用収縮が解消するまで進むかどうか。オバマ政権も議会も中小企業支援に積極的だが、実効良のある政策が実現するかどうかは不透明である。

 

家計部門の最大のテーマは雇用回復がどこまで進むかである。緩やかな景気回復が続くので600万人強のペースで増加していく可能性が高く、2010年12月の失業率は9.3%前後まで低下することが期待できる。ただ、この程度ではジョブレス・リカバリーの範躊である。前述の長期失業者の減少や不完全雇用率の低下は、企業の雇用に対する慎重な姿勢、長期失業者の就業能力の低下などを勘案すると、全体の失業率の低下に後れを取る可能性が高いと思われる。家計部門にとっては収入面で相当の不安が残り続け、失業率の低下など雇用が回復する割には、雇用面からの消費に対する下押し圧力が残る可能性が考えられる。また長期失業率の高止まりは、失業者の労働の技能や就労意欲の低下を通じて米国の労働力の質的な低下をもたらし、中長期的には米国の潜在成長率をi&rさせる一因となる恐れがある。一方で、雇用の回復が短期間で止まり、消費者心理が再び悪化して個人消費の回復傾向が崩れるといったリスクシナリオの可能性も低そうである。

先週発表された米国(アメリカ)雇用統計は事前予想ほど良い内容ではなかったため、米株が売られる一方米債は買われ、為替相場FXでは円高が進むリスク回避姿勢の値動きとなった。欧州の債券市場が荒れていることもリスク回避の米債買い、円買いの一因と見られる。今晩の入札が順調に進むようだと、市場参加者の安定志向と捉えたリスク回避の円買いが入る可能性はある。ただ、明日の10年債、明後日の30年債入札が控えていることもあり、今晩の入札結果で大きく動くことは正直難しい。他に目立った材料もないことからニュースや米株の値動きに注意したい。