金融危機を克服した米国経済

危機克服の財政政策で立場が悪化したオバマ政権

オバマ政権は、金融危機を早期に封じ込めることに成功したが、そのために高い代償をはらった。7,872億ドルにのぼる史上最大の景気刺激策は、2009年中に約350万人の雇用創出効果と失業者支援の拡大による消費の下支えなどの効果をもたらしたが、金融安定化計画とともに、2010年度の財政赤字をGDP比10%、連邦政府の純債務を同63%に押し上げてしまった(図3)。しかも、これだけの財政赤字にもかかわらず、失業率が9%台後半と高水準にとどまったことで、政権支持率も相当低下し、オバマ政権にとっての政治的なコストも膨らんでしまった。政権交代前後に雇用が急減し、財政赤字の拡大を嫌う議会の下で十分な雇用対策を講じられなかった不運もあるが、09年後半に政権の最優先課題を医療保険改革に絞り込んで、雇用悪化を見過ごすという戦略ミスがあり、挽回の好機を逸したことも確かである。
米国財政赤字のGDP比

 

予想外に早い金融危機の収束による市場と社会の変心もオバマ政権を振り回している。金融危機下では、「やむなし」として大規模な危機対策と財政赤字の拡大を容認した市場と社会が、すぐに危機が終わったために均衡財政を求める立場にあっさりと入れ替わってしまったのである。特に有権者の約4割を占める保守派は、危機の渦中では寡黙だったが、危機後は雇用の悪化が取り残された現状と財政赤字の拡大を激しく批判するようになり、反応を一変させた。この問、保守派が嫌う医療保険改革をオバマ政権が最重要課題に掲げて成立に導いたことも響いた。危機の下では容認・歓迎された米国経済・社会の構造改革のための財政支出を伴う「ニューディール政策」も、金融危機の収束後は保守派を中心に強く批判される対象に変わってしまった。

 

2009年前半のうちに金融危機が収束するという予想外の展開は、現在も危機が続いていた場合に比べれば、米国の家計、企業、オバマ政権にとって、もちろん望ましい結果である。しかし、ここまで述べてきたように、危機を封じ込めるためのコスト、早すぎる変化に対応しきれないで生じたコスト、危機を完全には止められなかったために生じた損失が意外に多い。それゆえに、危機の収束のもたらした成果が見えにくく、複雑な状態に見えるのである。まだ危機を総括するにはタイミングが早すぎるということかもしれない。

 

 

先週発表された米国(アメリカ)雇用統計は事前予想ほど良い内容ではなかったため、米株が売られる一方米債は買われ、為替相場FXでは円高が進むリスク回避姿勢の値動きとなった。欧州の債券市場が荒れていることもリスク回避の米債買い、円買いの一因と見られる。今晩の入札が順調に進むようだと、市場参加者の安定志向と捉えたリスク回避の円買いが入る可能性はある。ただ、明日の10年債、明後日の30年債入札が控えていることもあり、今晩の入札結果で大きく動くことは正直難しい。他に目立った材料もないことからニュースや米株の値動きに注意したい。